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2019/11/24

品質追求のバランスを意識することの大切さ

こんにちは、畠です。
トヨタをはじめとした製造業から“おもてなし”のサービス業まで、“品質”に対して高いこだわりを持っていると言われる日本人。
しかし、何かを作る際にあらゆる要素を最高品質にしようとすれば、人件費や材料費、時間など多くのコストを割くことになります。すべてを最高品質にすることによってビジネスが成功する可能性もありますが、ビジネスを成功させる上でコスト度外視というのは現実的でありません。むしろ、こだわるべきポイントを整理することで、効率的に予算や人員の配分ができ、運営の改善につながる可能性が高くなります。

そこで参考になるのが、東京理科大学の狩野教授が提唱する狩野モデルと呼ばれる法則です。ユーザーが製品やサービスに要求する品質と、顧客の満足度にどのような関係があるかを分かりやすい図で表しています。

一定以上高めても効果がない品質もある。

狩野モデルでは品質を「魅力品質」「一元的品質」「当たり前品質」の3つに大きく分類しています。

まず「当たり前品質」は、あって当然だがなければ大きな不満を覚える品質とされています。
例えば、スマートフォンにおいて通話ができることは当たり前品質にあたります。音が良いのは当たり前で、途切れるようでは大きな不満になります。

次に「一元的品質」は、上がれば上がるほど満足度が高まり、低いと不満につながるような品質です。
例えば、バッテリーの持ちは良ければ良いほど、ユーザーの満足度に繋がります。重量も軽いに越したことはありません。逆に重くなれば不満になっていきます。

3つ目の「魅力品質」は、なくても不満にはなりません。しかし、使ってみて充足感が高いと手放せなくなるような品質です。スマートフォンにおいては、高品質なハイレゾ音源での再生やTVの視聴などがそれにあたります。 

イノベーティブなサービスにつながるのは、一元的品質や魅力品質です。
当たり前品質を高め続けても、顧客満足度には繋がりません。また、魅力品質であった機能も、競合が提供するようになれば当たり前品質になってしまいます。一元的品質を高めれば、魅力品質に化ける可能性もありますが、一方で当たり前品質になってしまう場合もあります。
顧客次第で魅力品質になるかどうかも変わってきます。ハイレゾ音源での再生機能を高めたところで、ごく一部の人以外はその違いが分からないといったこともあるでしょう。

日本企業は、車などの製造業を中心に当たり前品質や一元的品質にこだわった製品を出してきました。 しかし、時代が変わり、インターネットとつながり、車をアップデートすることができるテスラも登場しました。
自動車においては、単純性能では差別化できず、自動運転やITとの融合など、魅力品質への投資が求められているように思います。そのような流れの中で、日本は海外に遅れをとっているのが現状です。
過去に携帯電話市場では、スペック偏重主義によって多くのガラケーが生み出されましたが、スマートフォンに市場を奪われてしまいました。

今後どうやってものづくりをしていけば良いか?

大事なことは、「今の時代の顧客にとってどのようなものが必要なのか」を考えることです。
自社の製品の強みを理解し、それを磨きましょう。当たり前品質を高めることだけに留まらず、魅力品質を磨くことも怠らないようにするのです。
サービスの特徴を整理すれば、どこを改善していくべきかの戦略を練ることができます。品質追求のバランスを考えましょう。
例えば、事業会社にいる方は、今開発・検討している機能が魅力品質なのか、一元的品質なのか、どれにあたるのかを意識することが製品の将来を考える上で重要なのではないでしょうか。

今回は、品質追求のバランスを意識する際に有用な法則、狩野モデルをご紹介しました。