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2019/06/22

セルフサーブで SaaS を成長させるには?

こんにちは、小俣です。
私たちの会社では、ブラウザ電話システム「CallConnect」と企業向けライブ配信システム「wellcast」という2つの SaaS を“セルフサーブ”と呼ばれる営業手法で展開しています。
※セルフサーブ•••顧客自身が製品を理解し試用、導入する。

今回は、セルフサーブで SaaS を成長させる上で知っておくべきことについて書いていきます。

セルフサーブが自社にとって最適な営業手法か?

まず、セルフサーブという営業手法が自社の SaaS にとって最適な営業手法なのかどうかを考える必要があります。どのような営業手法を採用するかは、以下の点を考慮して決定します。

  • 顧客あたりの年間契約額(ACV)が100万円以下かどうか。
  • 製品の導入や活用に、どの程度の知識・労力が必要か。

低ACV(ACVが100万円以下)の場合、人を介したセールスはコストに見合わない可能性が高いです。 反対に、ACVが高くなればなるほど、人を介したハイタッチなセールスが求められます。 また、ターゲット顧客が製品を理解するのに十分な知識/リテラシーを持っているか、導入時に相手企業の人員を何人巻き込む必要があるかによっても、採用すべき営業手法は変わります。
私たちが提供している2つの SaaS は、低ACV の部類に入り、導入フローもシンプルに設計してあるため、セルフサーブがメインの営業手法となっています。実際、毎月90%以上が自然流入した方からの契約となっており、ロータッチなセールスが機能している状況といえます。

セルフサーブがうまく機能するかどうかは、提供している SaaS の特性によって変わるため、まず自社の SaaS がどのような特性を持っているのかを分析する必要があります。

セルフサーブで SaaS を成長させるには?

1. 摩擦を減らす

セルフサーブで SaaS を成長させるには、製品と顧客との摩擦を減らすことが重要です。とにかく、全てをシンプルにするということです。申し込みのフローにしても、料金体系にしても、わかりやすさを追求し、顧客が感じる摩擦をできる限り排除します。

2. Land and Expand

セルフサーブで SaaS を成長させるには、まず小さく入れられるようにして、その後組織内で拡大してもらえるような設計にしておくのが重要です。Land を成功させるには、1で書いたように製品自体がシンプルで料金も明確、ユーザー自身が手軽に試せる必要があります。いきなり全社導入が必要な製品ではセルフサーブでの販売が困難です。
また、階層(tierd)型の料金プランを用意することでアップグレードを可能にしたり、アドオンで機能追加できるようにすることも、導入後に拡張してもらう為には欠かせない仕組みづくりです。

3. ACVに見合った獲得チャネルを見つける

低 ACV SaaSの場合、人を介したハイタッチなセールスを全見込み顧客に実施するのは困難です。そのため、自社のACVに見合った適切な顧客獲得チャネルを見つける必要があります。 セルフサーブで展開する SaaS でよく用いられる手法は以下のような手法です。

  • パートナーシップ
    セルフサーブで成長を続ける Atlassian は、全世界に400社以上のパートナーがいます。パートナー経由の売上も全体の4割を占めているようです。パートナーを有効活用することで、パートナーが抱える顧客ベースにアクセスすることができます。

  • 口コミ/アフィリエイト
    Atlassian やDropbox、Mailchimpといった低 ACV SaaSでは、口コミの重要性を早くから認識し、それをうまく活用してきました。口コミを生むためには、圧倒的な製品品質が必要です。加えて、紹介を促すアフィリエイトプログラムを立ち上げる企業も多いです。Mailchimp では、有料ユーザーはメールに Mailchimp のロゴを入れるかどうかを選ぶことができます。そして、もしそのリンク経由でサインアップが行われたら、そのユーザーに紹介マージンを支払うというアフィリエイトプログラムを設けていました。

  • 大規模マーケットプレイスへの露出
    自社のWebサイトに毎月何万、何十万というアクセスを集めるには、非常に大きな労力が必要です。そこで、大規模なアクセスが安定的にあるプラットフォーム上で露出することで、顧客獲得のきっかけを作ります。 例えば、アプリストアのような場所で上位ランキングに入れば、より多くの認知を獲得することができるでしょう。

おわりに

今回は、セルフサーブで SaaS を成長させる方法について書きました。
自社の ACV やターゲット顧客のリテラシーなどを考慮し、セルフサーブがそもそも最適な営業手法かどうかを検討しましょう。
そして、もし、セルフサーブを採用することになったら、製品の品質向上はもちろん、料金の透明性を高めます。良い製品を作れば勝手に売れるということはありませんが、少なくとも自動的に売れる仕組みづくりには上記が欠かせません。
低 ACV SaaS にとって、セルフサーブをうまく機能させられるかどうかは、事業の成長速度や成否を決める重要なポイントになるでしょう。

※参考
What Average Contract Value is Best for a SaaS Company
Invester&Financial Analyst Session